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神父さんのおはなし

2026年2/1発行 会報『不来方より』抄録

 

この記事を書いている今、 日本列島が未曽有の寒波に襲われていますが、豪雪や酷い寒さに見舞われるたびに思い出す聖書の箇所があります。 それは「あなたは雪の蔵に入ったことがあるか、雹の蔵を見たことがあるか」(イ オフ 38:22) という言葉です。大変な災難に次々 と見舞われたイオフ (ヨブ)という男が、神に自分の潔白を申し立て、自分の身に懲らしめの罰が降りかかるのはおかしいと主張したことに対する神の答えの中に、上記の言葉が含まれています。

そもそもイオフは、確かに何も悪いことのない立派な人物でした。 悪魔が神に「イオフが神に対して信仰深いのは、彼が裕福で何不自由ない暮らしをしているからであり、彼からそれを取り上げたらきっと信仰を失ってし まうだろう」と言ったことに対し、神はイオフの生命を取る以外のすべてを許し、悪魔にイオフを試みることを許容しました。それがイオフを襲った数々の災いだったのです。財産はすべて失われ、子供たちは死に、イオフ自身もひどい病気にかかりました。 イオフの妻は彼の惨状を見て「もう神を呪って死ねばよい」と言い放ちましたが、 彼は神への信仰を失いませんでした。 一方でイオフの友人たちは彼を訪ね、こんなに酷い目に遭うということは、イオフは何か罪を犯していてその罰が下っているのだから、それを神に懺悔しろとアドバイスしました。

しかしイオフは「私は神の前に何一つ罪になるようなことはしていない。犯していない罪の赦しを乞うことはできない」と拒絶します。しかしそのやり取りを聞いていた青年が彼らに神の真理を告げます。イオフの友人たちに対しては、苦難を「神の罰」と決めつける思い上がりを責め、イオフに対しては自分の正しさを主張するばかりで、神の知恵や考えの奥深さを理解しないことを糾弾します。その後神みずからが言葉を発し、 冒頭の言葉のような神の超越性と、人間の知性の限界の小ささが対比される展開となります。

イオフ書は「理不尽」なストーリーです。 正しいものが報われ、悪しき者が罰せられる世界であれば難しいことはありません。正しい方が得なのですから皆正しくあろうとするでしょう。しかし現実はそうではなく、正しいものが苦難に遭い、悪い者がますます栄えることだってあり得ます。そのような中で「神を呪う」ことも「神の方が間違っている」と言いたくなることもあるかもしれませんが、 それは浅はかであるとイオフ書は教えているのです。

神の知恵は私たち容易に理解できる「因果関係」に縛られるのではなく、むしろ私たちの知恵では「理不尽」にしか見えない形を取ることもあります。苦難に見舞われた時、安易に神の意図をでっち上げず(例えば、あなたが不幸なのは水子の霊が、先祖が悪いことを、あなたの悪事に、などなどの言説はみんなでっち上げです)、逆に自分は正しいのに神の方が間違っていると強情にもならず、「この苦難の意味は今の自分には分からないけれど、神がそれを許容しているということはきっと何か深い神の意志があるのだろう」と謙虚にそれを受け止め、そこから苦難に向き合うことを始めなければなりません。とにかく神の意図は私たち人間には計り切れるものなどではないという謙遜さを知る必要があるのです。

この箇所は復活祭の直前、受難週の大詰めの祈祷で朗読されます。大斎という「苦難」の時期を迎え、いよいよ喜びの光が見えるという時期にこの箇所を読むことの意味、 実に味わいものがあるんですよね。

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