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神父さんのおはなし

ドナルド・ダックを知っていますか 2024年11月

ミッキー・マウスと並び、ディズニーを代表するキャラクターで、水平の制服がトレードマークのアヒルです。かつてディズニーはドナルドを主人公にした短編をたくさん作りました。 ドナルドの登場する短編には典型的なパターンがあります。ドナルドが楽しいレジャーを準備する場面で物語が始まります。しかし次々とトラブルが発生し、癇癪をおこしたドナルドがそれらを挽回しようと躍起になればなるほど事態は混迷をきわめ、最後にはすべてを台無しにしてしまうというものです。例えば家にアリが入り込み、ドナルドは様々な手段でアリを駆除しようとしますがいずれも上手くいかず、最終的には家ごと爆破する羽目になってしまう、など(書いていて思いますが酷い話。)このようにどんどん頭に血が上り、喚き散らしながらトラブルの泥沼に嵌っていくドナルドの姿を私たちは笑いながら視聴します。しかしこれ、本当に他人事として笑っていられるような事柄なのでしょうか。

 私たちもしばしば、物事がやることなすこと上手くいかず、手を打てば打つほどすべてが裏目になり、何もしなかった方がはるかにマシだったという事態に直面します。天気予報は晴れと言っていたのに急な雨に降られ、急いでタクシーに乗ったらお金が足りず、仕方ないのでコンビニに寄ったら濡れた床で滑って転び、外を見たらもう雨が上がっていた、というような。もう何なんだよ!と毒づきながら床を蹴ったら今度は足の小指を折ってしまう。ドナルド・ダックなら笑って見ていられますが、いざ自分の身に降りかかったらみじめで情けないことこの上ありません。私たちは物事がうまくいかない時、多かれ少なかれドナルドのようになっているのかもしれません。

 これはそもそも、物事について「自分の思い通りになるべきだ」と思い込むからこそ起こることです。知らず知らずに傲慢になっているのです。自分の思い描く「理想の状況」があり、そこからズレてくると、だんだんにイライラしてきたり不安や焦燥感に駆られたりします。奢った心が心の不安定さを招きます。そしてそれを挽回しようとジタバタもがくのには、そこかに「自力で物事は挽回できる」とこれまた傲慢な気持ちが見え隠れします。もちろん理想の状況を望むのも、その実現のために努力を惜しまないにも大切なことです。しかし物事の結果如何は自分自身に属することではなく、時には自分の望まない形になることも、努力が実らないことも受け入れる必要があります。それを忘れると、私たちは望まぬ状況にますますムキになって頭に血が上り、やることなすことすべてが新しいトラブルとなって降りかかってくるドナルド・ダック的状況に陥ります。

 では私たちはどうすればいいのか。ひとまず今の状況を神に与えられたものだと受けいれることです。そのうえで今すぐ何か手を打つ必要があるのか、今しばらく様子を見るのか、冷静に祈りの気持ちを持ちながら考えることです。そして何かの決断をするならば、それが神の心に適うことであることを願い、その結果は神に任せて受け入れる覚悟を持つことです。これだけでドナルド的状況は激減することでしょう。人間はえてしてピンチの時ほど「自分の理想」「自分の責任」「自分で解決」と「自分」「自分」のエゴイスムに囚われがちです。そしてそれが良い結果をもたらすことはあまりありません。

 「あ、いま自分はドナルド。ダックになっている」と思った時、ひとまず立ち止まって神のことを思う。その余裕を恩寵としていただけるよう祈りたいものですね。

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